会期:12月4日・5日
開催形式:オンライン開催
演題:大学生におけるCMC(Computer-mediated communication)上の自己開示とインターネット依存傾向の程度及びインターネットの利用状態の関連について―自己開示の量とKHcoderを用いた分析―
12月に開催された精神衛生学会で、修士論文を発表しました。近年インターネット利用者の中で、インターネット依存症が問題視されていますが、これは未だ曖昧な概念であり様々な指摘がなされています。そこで本研究では、必ずしも医学的な治療を必要としないインターネット依存症を、インターネットを利用する中で至った状態をラベリングしたものと捉え、インターネット依存傾向という名称を用いて研究を行ないました。
インターネット依存傾向の原因の1つとして、FTF(Face to Face)の代替としてのCMCの利用が挙げられており、インターネット上での新たな人間関係の形成も行なわれています。そして、人間関係の形成や親密化には、自己開示が重要な要素となっています。このことから、インターネット依存傾向の人は、FTFとCMCで行う自己開示に違いがありCMCの方が円滑な人間関係を築くことができるため、インターネット依存傾向に繋がる原因の1つとなっているのではないかと考えました。
これらのことから本研究では、インターネット依存傾向の人が多いとされている大学生を対象にCMC上の自己開示とインターネット依存傾向の程度及びインターネットの利用状態の関連について、質問紙調査とHPを用いた実験を行い検討しました。
本研究の参加者には著しく高いインターネット依存傾向の程度を示す参加者はいませんでした。そのため、インターネット依存傾向になる性質のある人(インターネット依存傾向性質)として検討しました。その結果、インターネット依存傾向性質の程度及び利用状態の違いと自己開示量の関連はみられませんでした。一方、自己開示された内容に違いがみられました。インターネット依存傾向性質の程度が高い群は自己の内面に、低い群は幅広い対象に、非依存群は自己の外的な面に注目した内容の自己開示が行なわれました。子の中でも高い群では、友人と間で行なわれるような内容の自己開示が初対面の状態に近い実験者とのやり取りの間で行なわれました。更にその中でも人間関係の形成や維持を利用目的としている参加者は、より広い領域の内容の自己開示を行うことが明らかになりました。
今回の研究成果は、インターネットカウンセリングや対面でのカウンセリング前の関係作りなど幅広い領域で活用できたらと考えております。
臨床心理士/公認心理師 真田