医療法人イプシロン 北参道こころの診療所 渋谷区の精神科・心療内科

INSOMNIA

1.不眠症とは

誰しも今まで夜上手く眠れなかった経験は多かれ少なかれあるでしょう。「心配ごとがあって考えてしまって眠れない」「試験の前日緊張して眠れない」「旅先で床が変わって眠れないなど原因はさまざまです。通常は数日から数週もするとまた眠れるようになります。

しかし時に1ヶ月以上にわたって不眠が続く場合があります。不眠が続くと日中の倦怠感・意欲低下・集中力低下・抑うつ・頭重・めまい・食欲不振などの症状が出るようになります。このように「1. 長期間にわたり夜間の不眠が続き」「2. 日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」とき不眠症と診断されます。

日本では、一般成人のうち約21%が不眠に悩んでおり、約15%が日中の眠気を自覚しているとの調査結果があります。不眠症には4つのタイプがあり、寝つきの悪い「入眠障害」、眠りが浅く途中で何度も目が覚める「中途覚醒」、早朝に目が覚めてしまう「早朝覚醒」、ある程度睡眠時間は取れてもぐっすり眠れたという感覚が得られない「熟眠障害」に分けられます。

背景にうつ病などの不眠症以外の精神の病気があることもあれば、睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に気道が閉塞し呼吸が十分できなくなるので、睡眠が悪化する)、ムズムズ脚症候群(横になると脚がムズムズするので眠れなくなる)などの病気があることもあります。痛みやかゆみ、カフェイン摂取、交代勤務、騒音などが原因になることもあります。

2.不眠症の治療

まずは規則正しい生活と日中の充分な活動、ストレス解消が大切です。昼まで寝ていたらその日の夜寝つきが悪くなるのはある意味自然と言えます。人間は起きた時間を基準にその日眠くなるようにできていると考えるとよいでしょう。例えば生活リズムが後ろにずれていて遅寝遅起きになっていて、なかなかリズムが戻らない時は早く寝ようと頑張るよりも、一時的に寝不足になっても早く起きることを心がけた方がうまくいくことが多々あります。

また日中十分体を動かして疲れることが大切です。逆に夜は刺激を控えることが大切です。夜(できれば夕方から)のカフェイン摂取は避けましょう。コーヒーは有名ですが、紅茶、煎茶、ほうじ茶、ウーロン茶など多くのお茶(麦茶などは例外)に一般的にはカフェインが入っています。また夜間のスマホはできるだけ減らし、寝る直前の入浴や激しい運動も避けましょう。また睡眠時間に拘り過ぎないことも大事です。睡眠時間が短くても睡眠の質が良ければ問題ないこともあります。睡眠時間自体よりも日中眠くなるかの方が大事です。また年齢によって必要な睡眠時間は変化していきます。年齢を重ねると若い頃のようには眠れなくなりますし、それで問題ないとも言えます。

生活習慣の改善を試みてもなかなか不眠が改善しなかったり、睡眠時間が著しく短かったり、日中の不調がある場合は受診して相談することをおすすめします。

薬物療法を行うこともあります。「睡眠薬は怖い」というイメージを持っている方もいると思います。寝るためにアルコールを飲んでいるという方もいるでしょう。 実は睡眠薬よりアルコールの方が飲んでいくうちに効きが悪くなってどんどん量が増えていくと言うことが起こりやすいのです。またアルコールは寝付きは良くなりますが、睡眠の質が悪くなり途中で目が覚めることが増えるので睡眠全体としてはマイナスです。寝るためにアルコールを飲むよりも睡眠薬で治療した方がよいと言えるでしょう。

不眠症は「不眠への恐怖の病気」という側面もあります。不眠症の方は「今日も眠れないんじゃないか」と床につくときに無意識に身構えていることが多いです。逆説的ですが「眠れなかったら眠れなかったで良いや」くらいに考えていた方が却って眠れます。時には薬の力も借りつつ、生活習慣を改善し、昼夜のリズムを整え、うまく眠れた体験を積み重ねていく中で、寝るということが緊張するような特別なイベントでなくなっていくことが不眠症の改善につながっていきます。

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